茨城育樹祭ビラ弾圧救援会

ビラをまいたら1年後に逮捕 !? ◆ デッチ上げから二人を取り返せ !!

「水戸警察署の留置場から」(水戸百五十号の日記?です)

 留置場の中でもやはり金である。金があると、自弁といって昼と夜に弁当を頼める。千円で、豪華な中身らしい。東京だと自弁は昼だけだったと思う。他にもジュースや菓子、雑誌が買える。
 高い弁当を買う気にはならないが、食事時に出る薄いお茶には満足できないし、甘味にも飢えている。コーヒー牛乳とオレンジジュース、それとチップスターを頼んでみた。それと『週刊現代』も。こんなところにいるので、このくらい自分を甘やかしても。いや、いつも甘やかしているんだが。菓子とジュースは三時に出てくる。三時のおやつだ。チップスターは一週間後に出るとみて一日二枚ずつ食べている。何枚入っているのかわからないからだが、どうにかたりそうだと気づいて一日三枚に増量した。
 問題はコーヒー牛乳だ。僕は多分一日一リットルくらいコーヒーを飲んでいる。好きなのだ。ただ、普段は砂糖もミルクも入れない。コーヒー牛乳なんて子どもの頃飲んだきりだ。とにかくコーヒーが欲しい!と頼んでみた。届いたのは百八十ミリリットルのオレンジジュースに対して五百ミリリットルの立派なコーヒー牛乳だった。どちらもパックである。この段階ですでに失敗したと思っている。多過ぎる。飲んだ。コーヒー味はするような気はするが、やはりコーヒーではなかった。何より甘過ぎる。普段は砂糖・ミルク入りの缶コーヒーが廻ってくると顔をしかめて飲んでいる。以前、職場で砂糖・ミルク入りの缶コーヒーが出されて「ブラック党には拷問」と言っていた人がいたが同感である。誰かブラックコーヒーくれー!
 なお、ここで言われているブラック党とはノンセクト黒ヘルやアナーキストのことではない。彼らは党をつくらない。(無政府共産党がある、とか余計なつっこみをしないこと。)

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 七十年代北米のテレビドラマで『鬼警部アイアンサイド』というのがある。僕は高校か大学の頃にテレビ東京の再放送で見ている。
 出演はレイモンド・バー。一作目の『ゴジラ』の海外版(北米の映画会社が再撮影・再編集したものが世界中で上映された)『怪獣王ゴジラ』に新聞記者役で出演し、その縁で八十四年の『ゴジラ』の海外版にも出演したことでも知られる俳優だが、もちろん一般的には『鬼警部アイアンサイド』の人である。車イスに乗った刑事である。この国とのなんという大きな差!ただ、見ていて別に鬼には見えない。テーマ曲は今でも耳にすることができる。『アイアンサイド』を見たことがなくても、どこかしらで聞いたことがあるのではないかと思う。
 このテレビシリーズの一篇に『裸の警官』がある。アイアンサイドの部下の若い男性の刑事が、何かの騒ぎに巻き込まれて逮捕される。おそらくは好奇心から刑事は身元を明かさずそのまま逮捕され、留置場に入れられる。そこで初めて逮捕された者がどれだけ人権から遠ざけられて、非道な扱いを受けるのかを知り、激しい衝撃を受ける。当然にも身元は明らかになり、逮捕した刑事に「手間かけさせやがって、何考えてんだ。」と罵られて警部の下に戻り「どうだった」声をかけられ、その答えをもう僕は憶えていない。だが、彼の中では何かが大きく変わったはずだ。
 もちろんこれは六十年代から七十年代にかけての社会運動の高揚とそれに伴う救援・反弾圧運動が反映されたドラマだ。現在の北米ではこうはならないかもしれない。全ての警察官、検察官、裁判官はあの刑事のように、一度逮捕されてから仕事に就くべきだと思っている。

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 スマホがないと読書がはかどるのだ。携帯電話でさえ読書時間を奪うのだ。ましてやスマホの威力たるや。
おまけに今僕は賃労働をしていないのだ。一日の大半を労働に費やしている賃金奴隷にとって夢のような事態である。しかし現状は全く喜ばしくない。悪夢と言ってよい。
 とは言え、警察の取り調べは拒否しているので時間はたっぷりある。正直、一日は長い。
 するとどうなるかと言えば、読書がはかどるのだ!あれほど難渋したプラトンの『国家』の上巻を読み始めて五日目で読み終えそうだ。この分でいけば下巻も数日で読み終わるだろう。現在の目からすれば個人を全く認めない全体主義国家の建設を議論の上で愉しんでいるソクラテスたちには呆れ返るのだが、それでも楽しんで読んでいる。
 テレビもラジオもない場内は人の話し声が多少聞こえる程度で静かだ。読書には最適の環境と言ってもいい。だが、なるべくなら入りたくない。
 さあ、次は『イリアス』だ!